探しものはなんですか ?
痴呆のはじまりは、 「物忘れ」です。
しまった場所を忘れ、探し物をすることが多くなります。
私の知人の家のお話ですが「メガネがない」、「保険証がない」といっては、
「知らんか。」と日に何度も、聞きに来て困る、と私にこぼしていました。
探し物が見つからないことは、整頓の悪い者にとってはよくあることで、
私もいささか耳が痛いのですが、高齢者の探し物というのは、
探すという行為そのものが、まるで「なりわい」であるかのようです。
はからずも本人自ら、「探すことが仕事や。一日中何かかんか探しとる。」と、
自覚があるのは立派でした。
「で、一体、それは何に使うのですか?」
「いや、別に何ということはないけれど、いつもここにあったはずなのに、
今見たら見あたらないものだから・・」
家族は慣れたもので、口では「それは大変ですね。」といいながら、
あまり巻き込まれないようにする術を、いつのまにやら身に付けていました。
この時点では実際に存在したものを探しているわけですから、
思い込んだ場所とは別の場所から出てきたり、すぐ目の前にあるのに認識
できなかったり、見つかることがほとんどでした。
探しものだけとは、限りませんよね。